大きさ、長さ、硬さ、持続力や形など男性にとってペニスにまつわる悩みは後を絶ちません。
男としてのセックスシンボルであるが故の悩みかもしれませんが、とにかく“ペニスに自信がないと男性としての自信を喪失しかねない”から困った話です。
少々サイズ感が小さくとも、少々寒がりだったとしても、少々我慢がきかないやんちゃ坊主だったとしても何とかなりますが、それもこれも「勃起する」という前提があるからできる話であって、そもそも勃起しない状態ではお話にすらなりません。
勃起しない、しづらい状態を「ED」と言いますが、今回はこの男の大敵といえる症状について詳しく解説していきます。
ED(勃起不全)とは?
ED(Erectile Dysfunction)とは勃起障害や勃起不全などと訳すことができ、その名の通り勃起機能が低下している状態を指す言葉です。
なかなか立たない、立っても硬くならない、途中で萎えてしまう、そもそも勃起すらしないなどはすべてEDに該当する可能性があります。
ED=勃起しない状態だと思っている人もいますが、必ずしも勃起するかどうかだけが重要ではないことを覚えておきましょう。
勃起のメカニズムを簡単に表現すると、「脳からの指令によってペニスに血液が流れ込み海綿体を膨張させ、それを維持するためにペニス周辺の筋肉などが血液の流出を阻止する」というプロセスが起こっています。
要はこのプロセスが正常に機能しなくなっている状態がEDであり、「最初はギンギンに勃起してセックスを始められるが、射精する前に勃起が萎えてしまって流れが滞る」「結局はちゃんと射精までたどり着けるものの、勃起するまで時間がかかってしまい女性に負担がかかってしまう」などの症状が起こるわけです。
最初はほんの少しの違和感だったものが、あっという間に「あれ? なんで立たないの?」という状態になってしまう、男にとって非常に怖い症状です。
EDの原因は大きく3タイプ
EDの原因はさまざまですが、大きく分けると次の3タイプに分けることができます。
また、それぞれをさらに詳細に分類することもでき、原因に応じた対策を講じることが症状改善の近道です。
まずはEDの原因を大まかにでも把握しておきましょう。
心理的な要因(心因性ED)
セックス中に女性から心無い言葉を浴びせられてしまったり、失敗体験など精神的なストレスが原因となってEDを引き起こす可能性があります。
日常で起こる些細なストレスがきっかけの「現実心因」、そして幼児期のトラウマなど深層心理のストレスがきっかけとなる「深層心因」とストレスによって2つに大別することができます。
現実心因:緊張、焦り、過労、睡眠不足、パートナーに対する不信感、過去のセックス失敗体験、性病リスクへの恐怖、早漏や短小などのコンプレックス、妊娠への恐怖など。
深層心因:抑圧された怒り、不安、妬み、欲求不満、幼少期の性的虐待、エディプス・コンプレックス、LGBTなど。
血管や神経の障害などの要因(器質性ED)
加齢や持病など身体的な原因によっておこるEDです。
原因によって以下のタイプに分類できます。
加齢
年齢を重ねることで自然に体のさまざまな機能が衰えていきますが、これが原因でEDの症状が出る状態をいいます。
特に動脈硬化による血管障害が原因の一つに数えられます。
病気予防、生活習慣や嗜好性への注意など日常的な予防対策次第で大幅なリスク回避が期待でき、人によっては80代からED治療を行うことも可能です。
生活習慣病
糖尿病、高血圧、脂質異常症や心血管障害などの生活習慣病を原因とし、血管や神経に障害が起こる結果EDの症状が出る状態がこれです。
また、喫煙や過度な飲酒などもEDを引き起こす要因として密接に関係していると考えられています。
神経の障害
性的刺激を受けた脳が中枢神経、脊髄神経、末梢神経など体中の神経を介して「勃起」という命令を伝えますが、これらの神経のうちいずれかが障害を受けると上手く命令が伝わらなくなりEDの症状が出る可能性があります。
脳出血、脳しゅよう、脳外傷、パーキンソン病やアルツハイマー病などの疾患は自律神経障害を起こしEDの原因になります。
手術、外傷
前立腺がん、膀胱がんや直腸がんの摘出および切除手術など骨盤内臓器を摘出する際、陰茎海綿体の血管や神経を損傷する可能性があり、それが原因でEDの症状が出ます。
また、事故などで骨盤骨折や脊髄損傷が起こるとEDになる可能性があります。
その他
前立腺肥大症、前立腺炎や精巣静脈瘤などの泌尿器科系疾患がEDの原因になる可能性があるほか、慢性腎不全や血液透析を受けている場合はホルモンが変化したり、動脈硬化や神経障害が全身で進行するためEDが起こりやすくなります。
また、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍や多発性硬化症などの疾患、生まれつき陰茎形状なども原因になる可能性があります。
服用している薬剤などが要因(薬剤性ED)
持病の治療などで服用している薬剤によっては、EDを引き起こす原因になる可能性があります。
中枢神経、末梢神経、循環器系や消化管に作用する薬剤がよく知られています。
中枢神経に作用する薬剤:解熱、消炎鎮痛剤、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗精神病薬(メジャー・トランキサイザー)、催眠鎮静薬などの向精神薬
末梢神経に作用する薬剤:鎮けい薬、抗コリン薬
循環器系に作用する薬剤:不整脈治療薬、利尿剤、降圧剤、血管拡張剤、脂質異常症治療剤
消化管に作用する薬剤:消化性潰瘍治療薬、抗コリン薬、鎮けい薬
症状に応じて適切なED治療法を選ぶ
現在あるEDの治療法は、大きく3つです。
ED治療薬
現状最も基本となる治療法で、80%以上に効果があるとされます。
ただ、これは特に重度な疾患を持つ人も含めた場合の数値であり、健康な人ならば有用性は95%以上にもなるのではないかといわれるほど高い効果が期待できる方法です。
日本で認可されているED治療薬は、バイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類があります。
一部、「ED治療薬なしでは勃起できない体になる」「効果中は勃起が収まらなくなる」などと思い込んでいる人もいるでしょうが、実際にそういったことはないので心配はいりません。
ICI治療
比較的新しいタイプの治療法で、効果および即効性に最も期待できる治療法といわれています。
日本でもICI治療を導入するクリニックが増加していて、ED治療薬では効果が得られなかった人、心臓疾患や手術によって神経を損傷している場合などでも効果が期待できることが注目されています。
プロスタグランジンE1製剤という薬を陰茎海綿体に直接注射することで強制的に勃起させることができ、痛みもほとんどありません。
注入後5~10分程度で勃起が起こり、30分ほどかけて最大に膨張した後3時間ほど持続し、効果時間中は常に勃起状態が継続します。
射精後も勃起が継続する点はメリットにもなりますが、ピンポイントで使わざるを得ないので注意しましょう。
食事、運動、考え方など
ED治療薬およびICI治療はともに安全性、有用性の面で非常に高いものの、効果は一時的なものに過ぎません。
一部の原因によるEDならば完治のきっかけになる可能性も十分にありますが、やはり根本的な部分から改善を目指すことが大切です。
心と体の健康を保つ一番の方法は生活環境を改善することであり、バランスの取れた食事と健康的な生活環境が整うことでEDの原因を根本的に改善していくことが期待できます。
EDの原因である血行不良、その原因になりやすい血中脂肪や筋力減退は食生活の改善や適度な運動によって随分解消することができます。
また、「スローセックス」を取り入れる方法も効果的です。
AVのような射精ありきのセックスは男女ともに満足度がそれほど高くなく、射精を目的としていないスローセックスの方が、むしろ高い満足感と快感を得られるともいわれます。
セックスに対するストレスや不安感を解消するためやパートナーとの信頼関係を深めるためにはもちろん、マンネリ解消にも効果が期待できます。
「もしかしてED?」と思ったらなるべく早く対策を検討した方が賢明です。
軽い症状でもパートナーとのセックスで不安やストレスを感じるようになると重症化の恐れがあるほか、パートナーとの人間関係が悪化する可能性もあります。
ED治療薬の種類と特徴
国内認可3種のED治療薬について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
バイアグラ
世界初のED治療薬であり、日本でも最もよく知られています。
性行為の1時間程度前(空腹時は30分程度)に服用しますが、食事による影響が強いため注意が必要です。
有用成分:シルデナフィルクエン酸塩
持続時間:5時間程度
副作用:全身のほてり、軽度の頭痛やめまい、動機、目の充血、胸やけなど
併用禁忌薬:硝酸剤全般(ニトログリセリン含有剤)、塩酸アミオダロン塩酸塩錠100mgなど
レビトラ
バイアグラよりも溶解性が高く、食事の影響を受けにくい、即効性があるなどの特徴があります。
性行為の1時間程度前(空腹時は20分程度)に服用します。
有用成分:塩酸バルデナフィル水和物
持続時間:10mgで5時間程度、20mgで10時間程度
副作用:バイアグラと同じだが、20mgはバイアグラよりも効き目が強く副作用も強く出る可能性あり
併用禁忌薬:硝酸剤全般(ニトログリセリン含有剤)、抗ウイルス薬(HIV治療薬)、内服の抗真菌薬、抗不整脈薬
シアリス
バイアグラ、レビトラと比べて効果がゆったりと長く続くことが特徴です。
食事の影響をほとんど気にする必要がない反面、性行為の3時間程度前に服用しなければいけないので注意が必要です。
有用成分:タダラフィル
持続時間:10mgで20~24時間程度、20mgで30~36時間程度
副作用:バイアグラおよびレビトラと同様だが、効果がマイルドなので副作用も弱め
併用禁忌薬:硝酸剤全般(ニトログリセリン含有剤)
ED治療薬で起こる可能性がある副作用
バイアグラ
服用後30~40分ほどで効果が出始めますが、このタイミングで顔のほてり、目の充血などの症状がほとんどの人(9割以上)に現れます。
これはバイアグラが持つ血管拡張作用による影響であり、ちょうど飲酒時に現れるような症状が出ますが、効果が出始めた証拠と捉え不安になる必要はありません。
また、この他に頭痛、動機や鼻づまりなどのほか、光に対して過敏になったり色が違って見えるようになることもありますが、4~6時間程度で治まります。
頭痛の程度によってはロキソニンなどの頭痛薬を使用しても問題ありません。
万が一、この時間を経過しても症状が残る場合は医療機関を受診した方が良いでしょう。
レビトラ
バイアグラ同様、ほとんどの人に効果が発現するタイミングで顔のほてり、目の充血、頭痛、動機や鼻づまりなどの副作用が現れます。
効果が出始めた証拠として軽く捉え、状況に応じて頭痛薬を併用しましょう。
通常、効果持続時間経過後(4~6時間程度)にこれらの症状は治まりますが、以降も続くようならば医療機関を受診しましょう。
シアリス
バイアグラやレビトラと比べ、効果が緩やかに長く継続する特徴から副作用の頻度も随分低くなっています(3割程度)。
顔のほてり、頭痛、消化不良、背部痛、筋痛、鼻づまりや四肢痛などの副作用が報告されているほか、以下も過敏症の発現もごく稀に報告されています。
・発疹
・蕁麻疹(じんましん)
・顔面浮腫
・剥奪性皮膚炎
・Stevens-Johnson症候群
これらの症状が出た場合には、すぐに使用を中止して適切な処置を行うことが大切です。